「シネ・ヌーヴォ FROM NOW ON プロジェクト」詳しい経緯

映写環境改善について

2008年、ハリウッドが映画素材をフィルムからDCP(デジタルシネマ・パッケージ)に変換したため、映画館はそれに対応したデジタル映写機の導入を余儀なくされました。資金の少ないミニシアターでは、この導入は至難の技でしたが、各種助成などもあったことから、当館も2010年3月にデジタル映写機を導入することができました。この映写機がないと新作は上映できない事態でしたので、どうにか事無きを得ることができました。

しかし、高額な機械でありながら高性能のデジタル映写機の耐用年数は10年にしか過ぎませんでした。コロナ禍が過ぎ去ろうとしている今、ミニシアターでは新しいデジタル映写機の導入問題という新たな試練に襲われています。しかも、新しいデジタル映写機はランプ方式からレーザー方式に変わり、1台数百万円もするので、簡単には導入できません。

さらに驚いたのは、今まで使っていたデジタル映写機は、昨年ですでに生産が中止となり、部品のメンテナンスも打ち切りという事態になったのです。数百万円の機種がわずか10年で保守部品もなくなるという事態。高性能の機種なので、たった1つの部品が壊れただけで、映写機を使えなくなるのです。その部品さえあれば、まだ数年は使えるというのに……そんな事態に映画館は襲われています。いつ映写機が故障して、部品の1つがないだけで、上映が突然止まるかもしれない恐怖。世界の映画館でデジタル映写機の買い替えが急務になっています。

しかし、高額な新機種は簡単には導入できません。とりわけ採算ギリギリのミニシアターにとっては大変な事態を再び迎えることとなってしまいました。

 

そんな中、プロジェクター、サーバー共にまだ耐用年数が残っている格安の「出物」があるという情報を入手しました。さらに、故障した際に部品として使えるバックアップ機種も同時に購入できることになったのです。そんな機会は今後期待できない、そういう助言もいただき、緊急に導入することにいたしました。館内の照明工事なども再び行わないといけないことから、この際に全自動映写システム工事も同時に行う決断をしました。これは、フィルム映写とデジタル映写の双方を行うことで、映写技師に著しく負担がかかっている現状で、少しでも仕事が軽減できる利便性の高いそのシステムの構築を図ることでもありました。

 

緊急な導入になったのですが、一方で労働環境の改善ができることから、一部補助金を得て、不足分(といっても大半ですが)を公的融資でまかなうという資金計画を立てました。できるだけ自助努力で行おうと思ったのです。しかし、工事直前になって公的融資が半分しか下りないことになり、急速に資金繰りが悪化する事態となりました。

売り上げの減少と猶予された税金などの支払い

コロナ禍で2020年は消費税などの税金、健康保険などの諸費用の支払いが猶予され、支出も減ったことから大幅な収益源でも支援などを得てどうにか運営を維持することができました。しかし、あくまで「支払い猶予」でしかなく、コロナ禍からの回復もままならない翌年からこの取り立てが始まりました。

コロナが襲い休館を余儀なくされた2020年度は、前年の70パーセントまで観客が減少したことが売り上げの大幅な減少の要因です。2021年度は80パーセント、そして昨年2022年度は92パーセントと少しずつ減少額が減り回復していますが、それまでも赤字基調の当館では利益など出るはずもありません。この2020年度の「支払い猶予」の金額数百万円の取り立てが翌年から始まり、毎年同様に上記の諸費用も発生することから、倍額の納付を要請されるようになりました。分割納付などで、ギリギリの支払いを行ってきましたが、今年の春からこの取り立てが一層厳しくなり、その分割金の支払いが遅れると、猶予の取り消し、一括納付という恐ろしい事態となる旨、通告されました。

 

2022年度は結果的にコロナ前の92パーセントの売り上げとなりましたが、同年夏まではコロナ前のほぼ100パーセントに近い水準まで回復し、手応えを感じていました。このこともあって、映写環境改善を自力で行おうと考えましたが、昨年夏の勝負をかけた日本映画の大特集が不振に終わり、さらにそれ以降も低迷が続いたことが私たちには大きな打撃となりました。特集上映は、作品の賃借費用が1本いくらと決まっていることもあり、一度に大幅な赤字が出てしまうリスクがあります。そんな中、昨年の工事を迎え、融資も半分しか降りず、さらに今年になって税金などの取り立て問題も重なり、非常に厳しい事態になってしまいました。

 

今回、ご支援を皆さまに呼びかけることで、導入した設備資金の補填と2020年度の支払い猶予となった税金などの支払いに充てることができればと思っています。このピンチを乗り越えることができれば、平常的な運営においては、採算ギリギリとはいえ、今後も当館を存続していけると思っております。もし、さらに多大なるご支援をいただくことができれば、シネ・ヌーヴォXの座席リニューアルに補填したいと考えております。

以上、どうかご理解をいただき、当館の存続に向けて皆さまのご支援をお願いいたします。